卒論 ~自分探しの旅~

「こじらせ神」としての遺書

狼男と恋する腐女子

ある人物の話をしよう。私と親友との関係に大きな影響を及ぼした、「彼」の話を。

 

 

そのノートに「彼」の存在が初めて登場したのは、このような文章だった。

 

『文化祭の準備が始まった頃、私は親友から【暴力的なクラスメイトの男子】の話を聞くようになる。同じ部活の先輩に似てるとか、キレて友人の男子に暴言を吐いたり蹴ったり、ダンボールを折ったりした話を親友から聞いた。彼女がそんな彼を可愛いと言うのも。当時その【暴力的な男子】を、「声の高い男子」程度にしか認識していなかった私は、正直意味が分からなかった。【暴力的な男子】が少し怖くなった。』(『人間関係 高校編』より)

 

なお、実際のノートには【暴力的な男子】という書き方はしておらず、彼を表す「隠語」―いわゆるニックネームのようなもので表記されている。これまでの日記からの抜粋にも実際にはこの「隠語」がよく用いられていたが、ブログに書き起こすにあたって別の表現で書き換えてあるということを説明しておく(実際のノートには、親友の名前までもが「隠語」で表記されていたりする)。

 

この後日記には、私と親友との間でやり取りしていた、実在の人物を登場させた小説に、その【暴力的な男子】が登場し、他の登場人物であるクラスメイトの男子とのBLカップリングができただとか、そういった内容が続いている。

 

『小説を送り合ううちに、小説の登場人物としての彼らを気に入るようになり、現実の彼らに対しても興味を持ち始めた。』(『人間関係 高校編』より)

 

               ◇

 

『それからというものの、親友はたびたび私に「【暴力的な男子】に蹴られたい」「死ねって言われたい」などと口にした。この人Mなのかな、とか思ったりしたけど、ネタ的な好意らしい。』(『人間関係 高校編』より)

 

 

_人人人人人人人人_

>この人Mなのかな<

 ̄Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y ̄

 

我ながらとても率直な感想である。でもまぁこれらの発言を聞いたらそう思うのも無理はないと思いたい。

 

               ◇

 

『夏休み前のある日、私は親友から、【暴力的な男子】が【暴力的な男子】と仲の良いクラスメイトの女子のことが好きなのではないか気になる、という話を聞いた。その頃親友には付き合っている1歳年下の男の子がいたし、本人は【暴力的な男子】のことは「ネタ的な意味で好き」と言っていたので、そのときはそれで納得した。』(『人間関係 高校編』より)

 

補足しておくと、ここでの「ネタ的な意味」とは、二次創作(実在の人間をモデルにした話を二次創作と呼ぶかは微妙なところであるが)の小説の登場人物として好きという意味だと私は解釈している。最も分かりやすい言葉で表現するのであれば「推し」と言うのが妥当だろう。

 

               ◇

 

『間もなくして、体育祭の練習が始まった。そしてこの頃から、親友の【暴力的な男子】に対する想いが強くなっていく。フォークダンスのときの態度が少し冷たかっただけで死にたいなどと嘆いた。次の日私が、親友が喜びそうな【暴力的な男子】の話をしたら、「もう興味ない」と言われて衝撃を受けた。彼女の【暴力的な男子】への好意は、ネタ的なものから恋愛感情へと変わりつつあった。彼女は、フォークダンスの練習の時に彼に嫌われていると感じ、一度は彼に対して無関心になろうとしたものの、結局のところできなかった。この頃から親友は、○○円払って【暴力的な男子】に××してもらいたい、といったことを頻繁に口にするようになった。』(『人間関係 高校編』より)

 

『この頃から私は親友に対して若干の不信感と嫌悪感を抱き始める。一応彼氏がいるのにも関わらず他の人を好きになったことが到底納得できなかったし、これまで私が親友と一緒にネタとして話題にしてきた【暴力的な男子】に対して、彼女が本気で恋心を抱いているということにも複雑な心情だった。多分、2人でネタとして楽しんでいたものが、そうでなくなることが嫌だったのかもしれない。』(『人間関係 高校編』より)

 

このあたりの文章を見る限り、当時の私はまともな人間であり、親友に対して抱いた感情はまともなものだったのだと思う。しかし、不信感や嫌悪感を抱いた時点で、ひょっとすれば私の感覚はまともではなかったのかもしれない。

 

『これと同じくらいの時期―親友が【暴力的な男子】への好意を表し始める前くらいに、私は親友に「好きな人にLINEを送ることができたら勢いで【暴力的な男子】を追加する」とLINEで宣言し(宣言した相手は親友ではなく別の友人だったような気もする)、それを達成した。【暴力的な男子】を追加しようと思ったのは、その頃親友に【暴力的な男子】を追加することを謎に推されていたからだった。今思うと、そんな風に私を媒体に現実の【暴力的な男子】に関わろうとしたくせに、【暴力的な男子】を恋人として独占しようとしていたことが、私が親友に嫌悪を感じた原因の一つだったのかもしれない。』(『人間関係 高校編』より)

 

・・・今思い返してみれば、「好きな人にLINEを送る」ことと「【暴力的な男子】のLINEを追加する」ということの因果関係がいまいちよく分からないが、この頃の私の行動は、全て親友に影響されたがゆえの行動であった。

 

               ◇

 

『10月頃、親友から彼氏と別れたという報告を受けた。向こうから別れを切り出してくれた、と彼女は嬉しそうに語った(少なくとも私にはそう思えた)。

出会った当初の親友は、その彼氏を溺愛しており、彼が3日間修学旅行で東京に行くときも「3日も同じ県にいない」と嘆き、その3日間昼休みに携帯を開き中学校のホームページで彼の様子が載っていないか何度も確認したりしていた。私はそれを知っていたゆえに、親友が【暴力的な男子】に心移りしたことが納得できなかったし、別れて喜んでいることに至っては内心怒りを覚えたものの隠した。』

 

この頃の文章からは、私が親友に対しての嫌悪感を募らせつつも、今のままの関係でいることに心地よさを覚えており、それを壊すのを恐れ心中の不満を打ち明けられなかったことが垣間見える。

 

そしてこの頃から、私の【暴力的な男子】に対する感情も、徐々に変化していくのであった・・・

 

 

......To be continued

 

 

 

 

(もうちょっと続けようかと思ったけど書くの疲れた)